投資信託のリスクを味方にする

投資信託の『運用のブレ』が怖い?リスク指標(標準偏差)で知る『心の負担を減らす』ファンド選びの視点

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投資信託を始めたばかりの頃、基準価額が日々変動するのを見て、「ブレが大きいと損しそうで怖いな」「この値動きについていけるかな」と漠然とした不安を感じることはありませんでしょうか。特に、将来の資産形成のために始めたNISAなどで、想定外の大きな値下がりを経験すると、冷静さを保つのが難しくなることもあるかもしれません。

投資信託のリスクを示す指標はいくつかありますが、専門用語ばかりで難しく感じて、つい敬遠してしまいがちですよね。「標準偏差」「ベータ値」「シャープレシオ」など、どれも運用報告書やファンド情報サイトで目にするけれど、それが具体的に何を意味するのか、どうファンド選びに役立てれば良いのか分からない、という方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、投資信託の値動きにおける「ブレ」とは何かを分かりやすく解説し、特にその「ブレの大きさ」を知る上で重要な「標準偏差(ひょうじゅんへんさ)」というリスク指標に焦点を当ててご説明します。標準偏差を理解することで、ファンドの値動きの傾向が分かり、漠然とした不安を減らし、ご自身の「ブレへの耐性」や「心の負担」を考慮したファンド選びができるようになるでしょう。リスク指標を正しく理解し、「賢い資産運用」につなげるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

投資信託における「運用のブレ」とは?

まず、「運用のブレ」とは具体的に何を指すのでしょうか。これは簡単に言うと、「投資信託の基準価額(価値)が、平均からどれだけ大きく上下に変動するか」ということです。

例えば、毎月500円ずつしか変動しないファンドと、月に数千円、時には1万円近く変動するファンドがあったとします。後者のファンドの方が、値動きの「ブレ」が大きいと言えます。

基準価額は、投資対象の資産価格や為替レートなど様々な要因で日々変動します。この変動が大きいほど、短期間での利益や損失も大きくなる可能性があります。大きな利益が得られる可能性を秘めている一方で、損失が膨らむリスクも高まるため、精神的な負担も大きくなりやすいと言えます。

「運用のブレ」の大きさを測る代表的な指標:標準偏差

この「運用のブレ」の大きさを、数値で客観的に表すのが、「標準偏差」というリスク指標です。

標準偏差は、過去の基準価額のデータを使って計算されます。詳しい計算方法を知る必要はありませんが、大切なのはその数値が「値動きのブレの大きさ」を示しているということです。

例えば、同じような投資対象のファンドが2つあったとして、Aファンドの標準偏差が「15」、Bファンドの標準偏差が「5」だったとします。これは、過去のデータを見る限り、Aファンドの方がBファンドよりも値動きのブレが大きかったことを示唆しています。

もちろん、過去の数値が将来を保証するわけではありません。しかし、そのファンドがどのような値動きをする傾向があるのかを知る上で、標準偏差は非常に役立つ手がかりとなります。

標準偏差だけでは分からないこと、他のリスク指標との関連性

標準偏差は「ブレの大きさ」を知る上で便利な指標ですが、これだけでファンドの全てが分かるわけではありません。

これらの指標はそれぞれ異なる側面からリスクを捉えていますが、どれもファンドの値動きの特性を理解する上で重要なヒントになります。特に、標準偏差は多くのファンドで公開されているため、まずはこの数値からブレの大きさをイメージしてみるのが良いでしょう。

標準偏差を『心の負担を減らす』ファンド選びにどう活かすか?

標準偏差の持つ「値動きのブレの大きさ」という意味を理解すると、ご自身の資産運用に具体的に役立てることができます。

  1. ご自身の「ブレへの耐性」を考えるヒントにする: 投資信託は長期で保有することが基本ですが、その間には必ず値下がりする局面があります。その際に、ご自身がどれくらいのブレ幅なら精神的な負担を感じずにいられるか、を考えてみましょう。

    • 「毎月数千円程度の変動なら気にしないけれど、数万円単位で上下すると夜も眠れなくなりそう...」と感じる方なら、比較的標準偏差が低いファンドを中心に検討するのが良いかもしれません。
    • 「一時的に大きく値下がりしても、長期で見れば回復するはず、と割り切れる」という方なら、標準偏差が高い(ブレが大きい)ファンドも選択肢に入ってきます。

    標準偏差の数値を見て、「このファンドは過去にこれくらいブレる傾向があったんだな」と知ることで、実際に値下がりした時に「あ、これは標準偏差の数値通りだな」と落ち着いて受け止められるかもしれません。漠然とした「怖い」という感情を、「ブレの大きさ」という具体的な数値に置き換えることで、不安をコントロールしやすくなります。

  2. 同じ投資対象のファンドを比較検討する: 例えば、「全世界株式」に投資するインデックスファンドは、複数の運用会社から出ています。これらのファンドは、基本的に同じ指数に連動することを目指していますが、運用方法やコスト、そして過去の標準偏差には微妙な違いがあることがあります。 同じような投資対象であれば、一般的に標準偏差の数値も似たような水準になります。しかし、その中でもわずかに標準偏差が低いファンドは、よりブレが小さい傾向があった、と判断する材料になります。コストだけでなく、標準偏差を比較して、「少しでも穏やかな値動きが期待できそうな方を選ぼうか」といった検討ができます。

    ただし、標準偏差が低いことだけを追求すれば良いわけではありません。ブレが大きいファンドは、その分大きなリターンを狙っている場合もあります。ご自身の投資目的や、どれくらいのリスク(ブレ)を受け入れられるか、という「リスク許容度」に合わせて判断することが大切です。標準偏差はあくまで、ファンドの「性格」を知るための一つのツールとして活用してください。

まとめ:リスク指標を理解して、ブレへの不安を味方につける

投資信託のリスク指標、特に標準偏差は、決して難しいものではありません。「運用のブレの大きさ」を示すものだと理解すれば、それはファンドを選ぶ上で非常に役立つ情報になります。

漠然とした「リスクが怖い」という感情は、投資を継続する上で大きな障壁となります。しかし、標準偏差のような具体的な数値を見ることで、リスクを「ブレの大きさ」という形あるものとして捉えることができます。そして、そのブレの大きさがご自身の「心の負担」とどれくらい釣り合うかを考えることで、感情に左右されにくい、自分にとって心地よい投資スタイルを見つけやすくなります。

標準偏差を知ることは、リスクを単に避けるためだけではなく、ご自身がどれくらいのリスク(ブレ)なら受け入れられるのか、そしてそのリスクを取ることでどのようなリターンを目指すのか、といった賢い投資判断を行うための第一歩です。

ぜひ、これから投資信託の情報を見る際には、標準偏差などのリスク指標にも目を向けてみてください。数値が示す意味を知ることで、ファンド選びの視野が広がり、長期的な資産形成を続ける上での心の安定につながるはずです。リスクを正しく理解し、上手に付き合っていくことが、賢い資産運用の鍵となります。