標準偏差とシャープレシオで投資信託の実力をチェック!初心者向け解説
投資信託のリスク指標、どう見ていますか?
投資信託での資産運用、始められたばかりの方も多いのではないでしょうか。NISAなどをきっかけに運用をスタートし、いざ次のステップとして「どのファンドを選べば良いのだろう?」と考えたとき、目にするのが「リスク指標」という言葉かもしれません。
標準偏差、ベータ値、シャープレシオ...。なんだか難しそうな数字がたくさん並んでいて、「これって何を見ればいいの?」「そもそもリスクって漠然としていて怖い...」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
でも大丈夫です。リスク指標は、決して難解なものではなく、あなたの資産運用をより賢く、目的に合ったものにするための心強い味方になり得ます。特に、たくさんのファンドの中から自分に合ったものを選ぶ際に、これらの指標が役立つ場面は多いのです。
この記事では、数あるリスク指標の中から、特に投資信託選びでよく目にする「標準偏差」と「シャープレシオ」に焦点を当てて、その基本的な意味と、実際にどのようにファンドを比較する際に使えるのかを分かりやすく解説していきます。この記事を読み終えるころには、リスク指標に対する漠然とした不安が少し和らぎ、「なるほど、こうやって見ればいいんだな」と理解できるようになっているはずです。
標準偏差:投資信託の「値動きのブレ幅」を知る指標
まず、「標準偏差」について見ていきましょう。標準偏差は、投資信託の価格(基準価額)が、その平均値からどの程度ブレるか、つまり値動きの激しさを示す指標です。
- 標準偏差が高い:基準価額のブレ幅が大きい(=値動きが激しい、リスクが大きい)
- 標準偏差が低い:基準価額のブレ幅が小さい(=値動きが穏やか、リスクが小さい)
と理解してください。「リスクが大きい」というのは、大きく利益が出る可能性がある一方で、大きく損失が出る可能性もあるということです。逆に「リスクが小さい」というのは、大きな利益は期待しにくい代わりに、大きな損失も出にくい傾向があるということです。
例えば、過去の運用成績を見て、標準偏差が15%のファンドと5%のファンドがあったとします。一般的に、標準偏差15%のファンドは、価格が大きく上昇することもあれば、大きく下落することもある、よりダイナミックな値動きをする傾向があります。一方、標準偏差5%のファンドは、比較的安定した値動きをする傾向があると言えます。
あなたが「多少値下がりしても気にしないから、積極的にリターンを狙いたい」と考えるなら、標準偏差の高いファンドも選択肢に入ってくるでしょう。逆に、「元本割れは極力避けたい」「日々の値動きで一喜一憂したくない」と考えるなら、標準偏差の低いファンドの方が安心できるかもしれません。
標準偏差は、あなたのリスク許容度(運用によって損失が発生しても受け入れられる度合い)に合ったファンドを選ぶための一つのヒントになります。
シャープレシオ:投資信託の「リスクを取ったリターンの効率」を知る指標
次に、「シャープレシオ」です。シャープレシオは、投資信託が取ったリスクに対して、どれだけ効率よくリターン(収益)を上げられたかを示す指標です。
- シャープレシオが高い:取ったリスクの割に、より高いリターンが得られている(=運用効率が良い)
- シャープレシオが低い:取ったリスクの割に、得られたリターンが低い(=運用効率が悪い)
シャープレシオは、「リスク1単位あたり、どれだけ超過リターン(リスクのない運用よりもどれだけ多く稼げたか)を上げられたか」を示します。計算式を覚える必要はありませんが、「数字が大きいほど、リスクを取るのが上手だった」と覚えておくと良いでしょう。
例えば、同じ期間で、Aファンドのシャープレシオが1.5、Bファンドのシャープレシオが0.8だったとします。これは、Aファンドの方が、Bファンドと同じだけのリスクを取っていたとしたら、より高いリターンを上げられた、あるいは、同じだけのリターンを上げるのに、より少ないリスクで済んだ、ということを意味します。つまり、Aファンドの方が過去の運用において効率が良かったと言えるのです。
シャープレシオは、特に似たようなタイプのファンドを比較する際に非常に役立ちます。「国内株式に投資する」という方針が同じファンドが複数ある場合、どちらのファンドがより効率的にリターンを上げているかを知る目安になります。
標準偏差とシャープレシオを使ってファンドを比較してみよう
さあ、標準偏差とシャープレシオの意味が分かったところで、実際にファンドを比較する際にどう活用できるかを見ていきましょう。
あなたが「国内株式に投資する投資信託を選びたい」と考えているとします。いくつかの候補ファンドを見つけ、過去の運用成績を調べていると、標準偏差とシャープレシオのデータが載っていました。(ここでは架空のファンドCとDを例にします。)
- ファンドC: 標準偏差 18%、シャープレシオ 0.9
- ファンドD: 標準偏差 15%、シャープレシオ 1.2
このデータから何が読み取れるでしょうか?
- 標準偏差を見る: ファンドC(18%)は、ファンドD(15%)よりも過去の値動きのブレ幅が大きかったことが分かります。もしあなたが値動きの激しさを避けたいなら、ファンドDの方が好ましく感じるかもしれません。
- シャープレシオを見る: ファンドD(1.2)は、ファンドC(0.9)よりもシャープレシオが高いことが分かります。これは、ファンドDの方が、取ったリスクに対してより効率的にリターンを上げられていたことを意味します。
この例の場合、ファンドDはファンドCよりも標準偏差が小さく(値動きが穏やかで)、かつシャープレシオが高い(リスクを取ったリターン効率が良い)という、運用効率の面で優れている可能性を示唆しています。ただし、これは過去の一定期間のデータに基づいた評価であるという点に注意が必要です。
このように、標準偏差とシャープレシオを併せて見ることで、単に「リターンが高かった」「値動きが小さかった」だけでなく、「どれだけ効率的に運用されていたか」という、より深い部分を読み取ることができます。
リスク指標を使う上での大切なポイント
標準偏差やシャープレシオは、ファンド選びの非常に有力なツールですが、使う上でいくつか知っておいていただきたい大切なポイントがあります。
- 過去のデータである: これらの指標は、あくまで過去の運用実績に基づいています。過去の成績が将来を保証するものではないという点は、常に意識しておきましょう。
- 比較する期間と対象を揃える: ファンド同士を比較する際は、必ず同じ期間で算出された指標を見比べてください。また、全く異なるタイプのファンド(例:国内株式と海外債券)を、これらの指標だけで単純に比較することは適切ではありません。似たような投資対象や運用方針のファンドを比較する際に有効です。
- 指標が全てではない: リスク指標はファンド選びの一つの側面を示すものです。ファンドの運用方針、組入資産、コスト(信託報酬など)など、他の様々な情報も総合的に考慮して判断することが大切です。
- 自分のリスク許容度と合わせる: シャープレシオが高いファンドが良いファンドとは限りません。標準偏差が高い(リスクが大きい)ファンドで、その大きなリスクに見合うだけのリターンが出た結果、シャープレシオが高くなっている場合もあります。まずはご自身の「どれくらいリスクを取れるか」という許容度を考え、それに合った標準偏差の範囲でファンドを探し、その中でシャープレシオを見て効率性を判断する、という流れがおすすめです。
まとめ:リスクを正しく理解して、賢い資産運用へ
この記事では、投資信託のリスク指標である標準偏差とシャープレシオについて、その意味とファンド比較での活用方法を解説しました。
- 標準偏差:値動きのブレ幅(リスクの大きさ)を示す。あなたのリスク許容度に合わせてファンドを選ぶ際の目安になる。
- シャープレシオ:取ったリスクに対するリターン効率を示す。数字が大きいほど効率が良い。似たタイプのファンドを比較する際に役立つ。
これらの指標を理解することは、投資に対する漠然とした不安を減らし、「このファンドは、こういうタイプのリスクがあるのか」「このファンドは、効率的に運用できているのかな」と、より具体的にファンドの中身を理解できるようになる第一歩です。
リスクは怖いものではなく、資産運用において向き合うべきものです。リスク指標を正しく理解し、自分のリスク許容度と照らし合わせながら、これらの指標をファンド選びのツールとして活用してみてください。そうすることで、あなたの資産運用は、より目的に合った、賢いものになっていくはずです。
ご紹介した指標以外にも様々なリスク指標がありますが、まずは標準偏差とシャープレシオから理解を進めるのがおすすめです。ぜひ、あなたが保有している、あるいはこれから購入を検討している投資信託の情報開示資料などで、これらの指標を探してみてください。そして、それが何を示しているのか、この記事を参考に考えてみましょう。
あなたの資産形成が着実に進むことを願っています。